失敗しない非機能要件の定義方法とは?抜け漏れを防ぐチェックリストと手順

プロジェクト炎上の隠れた原因、非機能要件とは?

1.1. 非機能要件がプロジェクトを失敗させる理由

  • 機能要件(何をやるか)に集中しがちで、非機能要件がおろそかになる。
  • 非機能要件の不備は、開発終盤やリリース後に発覚し、手戻りや大規模改修につながる最も大きなリスクである。

1.2. 本記事で学ぶこと

  • 非機能要件の全体像とカテゴリを理解する。
  • 抜け漏れを防ぐための具体的な定義手順とチェックリストを手に入れる。

非機能要件の全体像と主要な6つのカテゴリ

非機能要件を定義する上で世界的に参照されるISO/IEC 25010などの分類に基づき、網羅性を確保します。

  • 2.1. 性能効率性(パフォーマンス・負荷)
    • システムの処理速度、応答時間、ピーク時の同時接続数など、**「速さ・耐荷重」**に関する要件。
  • 2.2. 互換性(相互運用性・共存性)
    • 既存システムや外部サービス、異なるOS/ブラウザとの連携・動作に関する要件。
  • 2.3. 使用性(ユーザビリティ・アクセシビリティ)
    • ユーザーインターフェースの使いやすさ、学習しやすさ、操作の快適さに関する要件。
  • 2.4. 信頼性(安定性・可用性)
    • 故障率、回復時間、システムの稼働時間(SLA)など、**「止まらないこと」**に関する要件。
  • 2.5. セキュリティ(機密性・完全性)
    • 認証/認可、データ暗号化、不正アクセス対策、個人情報保護に関する要件。
  • 2.6. 移行性・保守性(運用・拡張性)
    • 将来的なシステムの拡張のしやすさ、テストのしやすさ、バックアップ・監視体制に関する要件。

失敗しない!非機能要件を定義する具体的な手順

曖昧な言葉を避け、開発者と顧客が合意できる具体的な数値や基準に落とし込むための手順。

  • 3.1. 経営目標とサービスレベルの確認
    • 「システムが止まるとどれだけの損失が出るか?」など、ビジネス上のリスクから必要なレベルを逆算する。
  • 3.2. 利用シナリオに基づく負荷予測
    • ピーク時間帯やイベント発生時など、最も負荷がかかる状況を具体的に想定する。
  • 3.3.「定量的」な目標値の設定
    • 「速い」→「3秒以内に95%の処理を完了
    • 「落ちない」→「年間稼働率99.999%(ファイブナイン)」のように、数値で定義する。
  • 3.4. 責任範囲の明確化(誰が対応するか)
    • 特に運用・保守要件では、「障害発生時の連絡体制」「対応時間」など、開発側と運用側の責任範囲を明確にする。

【実践チェックリスト】抜け漏れをゼロにするための質問集

4.1. 性能効率性チェックリスト

  • 平均的な応答時間は何秒を目指しますか?
  • ピーク時の同時アクセス数は何名と想定していますか?
  • データベースの最大データ量はどれくらいですか?

4.2. セキュリティチェックリスト

  • ユーザー認証は多要素認証を導入しますか?
  • 顧客の個人情報はどのように暗号化して保存しますか?
  • 不正アクセスやDDoS攻撃への対策はどこまで行いますか?

4.3. 信頼性・可用性チェックリスト

  • システムの計画停止はいつ、どのくらいの頻度で許容されますか?
  • 障害発生時、何分以内に復旧する必要がありますか?
  • データのバックアップ頻度、保存期間、リストア手順は定めていますか?

4.4. 使用性(ユーザビリティ・アクセシビリティ)チェックリスト

システムの「使いやすさ」と「操作性」に関する要件を確認します。

質問項目目的と考慮事項
操作の習熟度システムの対象ユーザーは、どの程度のITリテラシーや習熟度を想定していますか?(初心者向けか、専門家向けか)
画面構成の標準化画面遷移やボタン配置など、UI/UXの設計標準(デザインガイドライン)はありますか?
エラーメッセージエラーが発生した際、ユーザーが具体的な原因と対処法を理解できるメッセージが表示されますか?
入力補助・検証ユーザーの入力ミスを防ぐためのリアルタイム検証(例:半角/全角チェック、必須項目チェック)はどこまで行いますか?
アクセス性色覚異常や視覚障碍者など、多様なユーザーに対応するためのJIS X 8341-3(Webアクセシビリティ)などの基準に準拠しますか?
マニュアルシステム操作マニュアルやFAQは、どの形式(Web、PDF、動画)で提供しますか?また、誰が作成・更新しますか?

4.5. 互換性(相互運用性・共存性)チェックリスト

外部システムや環境との連携・共存に関する要件を確認します。

質問項目目的と考慮事項
対応OS・ブラウザシステムが動作を保証するOS(Windows/Mac/iOS/Android)のバージョンと、ブラウザ(Chrome/Edge/Safari/Firefox)の範囲を明確にしてください。
外部システム連携連携が必要な外部システム(例:会計システム、SFA)は何ですか?そのインターフェース(API、ファイル連携など)は確定していますか?
データ形式システム間でやり取りするデータの形式(JSON、XML、CSVなど)や文字コードの標準規格は何ですか?
モバイル対応モバイル環境(スマートフォン、タブレット)からの利用は必須ですか?必須の場合、レスポンシブデザインで対応しますか、専用アプリを用意しますか?
共存環境他のアプリケーションと同じサーバー環境で動作する場合、リソースの競合(CPU、メモリ)を避けるための規定はありますか?

4.6. 移行性・保守性(運用・拡張性)チェックリスト

システムの長期的な運用や将来的な変更のしやすさに関する要件を確認します。

質問項目目的と考慮事項
データ移行既存システムからのデータ移行は必要ですか?必要な場合、移行対象データ量、移行期間、移行後の検証計画を定めていますか?
ソースコードの保守性ソースコードのコーディング規約(命名規則、コメントの書き方など)を定め、誰でも保守しやすい状態を維持しますか?
監視体制システムの稼働状況(CPU使用率、エラーログなど)を監視する方法(監視ツール、通知方法)を定めていますか?
拡張性将来的にユーザー数や機能が増加した場合、システムは容易にスケール(拡張)できる設計になっていますか?(例:サーバー増設の容易性)
ドキュメント更新開発完了後の設計書、テスト仕様書、運用マニュアルなどのドキュメントは、誰が、どのタイミングで更新するルールになっていますか?
ライセンス管理利用する外部ライブラリやミドルウェアのライセンス形態(OSS、商用)と、その管理方法を明確にしていますか?

非機能要件の定義は、プロジェクトの「保険」である

機能要件が「表の成果」だとすれば、非機能要件は「裏の信頼性」です。

この地味で骨の折れる作業を徹底することで、後工程での手戻り、顧客からの信頼損失、そしてプロジェクト炎上という最悪の事態を防ぐことができます。

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